28 雑誌「popeye」創刊号


脇道堂書店 〜わたしの一冊〜編集者/柏子見

「40年を超えた、人生のバイブル」

その本は、まだ手元にない。

ヤフオクでもメルカリでも、何でも手に入る時代なのに持っていない。
でもいつかは欲しい本。それは今も販売されている雑誌「popeye」の創刊号だ。
本と呼ぶには稚拙すぎて恥ずかしい…、
でも企画を聞いて真っ先に浮かんだのが紛れもなくこの本。

嘘をついて他のかっこ良さげな本を出すことも考えたが、
オフサイドの入社試験に出た最近の読書とその感想文で、ナナメ読みして書いた記憶がよぎったので、
ホンネで書くことにしました。(29年目のカミングアウト<(_ _)>)

・・・

雑誌ポパイ創刊の1976年は高校1年という人生で最も多感な青春時代。
スポーツやファッションに目覚め、アメリカンカルチャーへの憧れが半端じゃなかった。
そこに突如現れたシティーボーイのための雑誌は、田舎者のボクにとって教科書でありバイブルであり、明らかに人生を変えた1冊である。

マンガ雑誌にはそれほど興味がなかったためか、それまで雑誌と言えばアイドル全盛時代の月刊誌「平凡・明星」など、芸能人や日本の若者カルチャー誌が話題の中心だった。

ファッションやブランドへの興味も当時としては早熟で、6つ上の兄貴の「MENS’CLUB」を中学から盗み読みしてアイビーやトラッドなどVANから海外ブランドまで知識を重ねた。

また、テレビドラマ「俺たちの旅」の中村雅俊に憧れて、ベルボトムの新品ジーンズを履いて風呂に入りタワシで擦って中古風に仕上げ、さらに輪切りにして自作でツギハギデニムを縫ったりした。

・・・

そんな時代に「popeye」の登場は衝撃的で、
カリフォルニア発アメリカの学生の自由で刺激的な生活から発信される情報が、まさに玉手箱のように飛び出してくる。

新ブランドの情報は当然ながら、UCLAやオレゴンなどの大学発のブランドカラーを知り、サーフィン・スケートボード・スキーなどの最新スポーツから、アメリカの大学生なら必須の車の話題まで、隔週発行の日々が待ちどうしくてたまらない。

すぐに買ったスケートボードだが、家の前の道路はまだ未舗装の時代 。
隣の神社の狭い参道で、鳥居の下から神木まで滑って練習した。
なんともバチ当たりな田舎のシティーボーイだった。

・・・

確か創刊号から買い続けた訳ではなく、手元にあったのは3号か4号あたりからだった。
そのうち創刊2号が古本で手に入るが今でも創刊号は幻のままだ。
大量にあった古い雑誌も今はほとんど処分してしまい、好きなデザインの表紙数冊が手元に残るだけ。

それがなんと1年ほど前、その創刊号が付録に付いた40周年記念号が発売になった。
たまたま店頭で見つけ迷わず買った。記念号本体は見向きもしないまま復刻創刊号を貪るように開いた。

ところが、当時の本物をスキャンして作ったようで写真や本文が滲んだように汚いのが残念で、
さらに時代の鏡である広告がすべてビームスの広告に差し替えられているのである。

なんと完璧な“ビームスのオマケ本”ではないか。

広告は時代の鏡である。『欲しくても手が出なかった憧れの一品』がたくさん載った、
大切な思い出を搔き消されたに等しい残念な想いで、
未だホンモノ「創刊号」への思いは消えないままである。

※本棚には実際のビームス「オマケ本」と「タイムスリップグリコ」の豆本置きます。
※イメージは思いを込めて、野村の手書きイラストです。

2018.1.19
野村英二

公開日/2018年01月19日



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