No.9 困った…。


脇道映画館 〜わたしのジブリ〜編集者/柏子見

僕はジブリ作品をきちんと観たことがない。
そもそも映画自体を観ることがほとんどない。
(一年に片手で数えられるほど)
かろうじて観たといえる作品が、
『となりのトトロ』か『火垂るの墓』ぐらい。
それも父親がどこからかダビングしたビデオを小学生の頃観た程度。

大学時代、僕があまりにジブリ作品を知らなすぎたために、
ある友人から「お前はおかしい。見てないなんてありえない。
常識として観ておかなきゃダメでしょ。」とキレ気味に言われた。
好きな場面の一つも語れないのは人として恥だ。ぐらいの勢いで。
しかし、あまのじゃくな性格もあり、その後は余計に、意識して観なくなった。

そんなあまのじゃく男と、ジブリとの接点をあえて語るとすれば、「美術館」かもしれない。
もちろんあの有名な三鷹の森ではない。
一時期、この近辺でやっているいろんな展覧会に行っていた。
特に原画展が好きなのだが、そこに惹かれてジブリ関連のものに2回ほど行ったのだ。

一つ目は「近藤喜文展」
アニメーターの方の作品展だったと思う。
作品もキャラも知らないあまのじゃく男は、鉛筆描きの素描(絵コンテというのかな)が上手すぎて感動していた。
落書きぐらいの線だけで、今にも動き出すんじゃないかというほどの躍動感があった。

もう一つは「鈴木敏夫 言葉の魔法展」
自身の生い立ちやプロデューサーとしての仕事歴を自身の書画とともに展示した回顧展。
各作品の名言が垂れ幕になっていて、それをみんな嬉しそうにスマホで撮る中、
名言も当然知らないあまのじゃく男は、鈴木氏が若手時代、作ったという社員旅行の手書きの旅程表が綺麗すぎて感動していた。
イラストも交えて自分自身が楽しんでいる感じが伝わってきたのだ。
それと、以前「脇道書道場」で僕が書いた
「どうにかなることは どうにかなる。どうにもならんことは どうにもならん」という言葉も
鈴木氏がそこで紹介していたものだったりする。

なんだかとりとめもなくなってしまったが、
こういった人たちが一つになって作っているからこそ、
映画史に残る作品が出来上がってゆくんだと感じる。
それと、自分がジブリのことで感動して、記憶に残っていることが
やっぱり映画本編じゃなくこんな部分だったか、とこれを書きながら思った。

2020年10月14日
内藤 友貴

公開日/2020年10月14日



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