No.11 ジブリの映画で何が一番好き?


脇道映画館 〜わたしのジブリ〜編集者/柏子見

「ジブリの映画で何が一番好き?」
人生で何度か尋ねられるこの質問に、僕は今まで1秒も迷わず「もののけ姫」と答えてきました。
祟り神のグロテスクなヴィジュアルと、シシガミ様の平等かつ理不尽で残酷な振る舞い、
暴力の衝動と戦うヒロイックな主人公、あとサンがすごい可愛い。
シビれる理由は山ほどあります。
だから今回の企画でも、最初はもののけ姫のことを書こうとしていました。

でもいざ書いてみると、どうも何か違う。
書き上がったものを読み返すと、嘘くさく感じてしまう。
・・・よくよく考えたら、最後に例の質問をされたのはいつだろう?

今の自分が本当に好きなジブリ映画は、果たしてなんなのか。
自問自答してみると、たっぷり1分以上は思案した後で
「狸のやつ」という答えが返ってきました。

「平成狸合戦ぽんぽこ」

住処の森を守るために、狸が人間と戦うお話。
狸が可愛いかったことと、百鬼夜行のシーンが格好良かったことは記憶にあっても、
子供の頃にテレビで見た際には、どうもピンときませんでした。

とにかく、今の自分が選んだジブリを見てみようと思い、
仕事帰りにTUTAYAに寄ってレンタルしました。

改めて見てみると、なんとまぁ、気の毒なほど狸が人間にボロ負けする映画でした。
森を守ろうにも、狸にできることは人間を驚かせる程度のことで、
結局森は守れないし、狸たちは皆バラバラになって、最後には大勢殺される。
主人公も人間に化けて、人間として生きざるを得なくなる。

こんなんやっけ・・・

子供の頃に見た印象と全然違い、大げさかもしませんが、なかなか衝撃的でした。
どうして今の自分がこの映画を好きだと感じたのか、はっきり言ってわかりません。
どうしてもののけ姫よりこっちが好きだと思ったのか。

でも、最後の最後、サラリーマンになった主人公の狸が昔の仲間たちと再会し、
狸に戻って遊ぶシーンで、何となく嬉しくなって泣きそうになりました。
どうしてだか分からないまま、32歳の僕の一番好きは映画は、この「狸のやつ」でした。

2020年10月28日

坂口雄城

公開日/2020年10月28日



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