No.2 ユニカンタイズ
日本語に翻訳しづらい外国語が、好きです。曲になったことがある「サウダージ」などが有名でしょうか。サウダージは、郷愁や懐古など、かなり広い範囲の感傷を意味するポルトガル語です。ポルトガルといえば首都はリスボン。リスボンといえば、大航海時代の発祥地となった貿易港です。
かつてはエンリケ航海王子も「香辛料貿易まじダルい、海賊まじウザい、まじサウダージ」などとぼやいたり、ヴァスコ・ダ・ガマも「どうしたんだい?ひどくサウダってるじゃないか。探検事業で、私とエルドラドを目指さないか?」などと、上京したての若者を酒場で勧誘したかもしれません。たぶんしてないけど。
とにかく、言語は文化ですから、特定の言語にしかないコトバは、それをつくった人たち独自の歴史や地理に由来する、価値観から生まれたのだと思います。私がつくる単語もきっと、私だけの出自や性格をはらんでいるのでしょう。
Uniquanteyes【ユニカンタイズ】 Google検索(英字/片仮名):0件
[品詞]
名詞:造語(Uni 接頭語:一つにする、結合する + Quantum 量子 + Eyes 目)
[意味]
恋人がいない、ひとりぼっちのクリスマスイブ深夜。ラブホテルのそばを通りかかった際、とてつもなく明るかったのでふと見上げると、全室の窓に明かりが灯っていた。距離にして、わずか二、三十メートル。その光のひとつひとつに営みがあり、窓の数だけメリクリ的なハッピーストーリーがあることを想像した時の、形容しがたい不思議な感覚。
それは、寂しさや嫉妬といった低俗な感情ではなく、不確定であるはずの個々の人生が、申し合わせることなく同じ日時と場所に向けて行動し、一体的な現象を起こすという量子力学的なパラドックスの発見。
つまり、このシーンにおいて、ホテル内の全カップルの営みは、単に二人の情動という「点」の現象ではなく、人類にプログラムされた因果律によって結集し、寒空に佇む可哀想な私に、まばゆく光る団体芸を披露するという「波」の現象であったという結果が、“私の観測によって収束した”というコペンハーゲン解釈。
すなわち、恋とは、寄せては返す波のように(以下略)
量子の世界で点か波かは、どちらでもあり、どちらでもなく、観測で決まります。
「ちょっと何言ってるかわからない」という方は、こちらの動画をご覧ください。
[用途]
恋愛関連で平静を失った時、非常に理屈っぽい話に切り替えることで、動揺した自分を隠す。
[例文]
じゃあ週末、予定空いてたらご飯でも…えっ、彼氏と約束!?えっていうか彼氏いたの?えまってマジで?あっそう…へえー、そうなんだ………なんか、アレだ、ユニカンタイズだわ。いや、ショックとかじゃないのよ。ぜんぜんショック的な感じではないんだけど、これユニカンタイズだわ。ユニカンタイズまであるわー。
2021年6月22日
長谷川 雄一
公開日/2022年06月22日