No.4 コピーパスタ


脇道くしゃがら道〜まだネットにない言葉〜編集者/柏子見

存在しないものを神聖視する風潮はおそらく人類史始まってから連綿と受け継がれているもののように感じます。古くは神や妖怪などとされたそれらのものや現象は、現代ではほとんどが科学やインターネットによってつまびらかにされてしまいましたが、今度は「存在しないもの」を作り出すのが一種の遊戯として定着し、それらが都市伝説として受け継がれるようになるという流れができていきました。

この、「存在しないものを作り出す」という事例において、似たような現象にはマンデラ効果、ウーズル効果、フェイクロアなど細かな分類がありますが、こと今回のテーマである「くしゃがら」に関しては「クリーピーパスタ」が一番近いのではないかなと思います。

クリーピーパスタとは海外の匿名掲示板が発祥の文化の一つで、日本でいうとトイレの花子さんや口裂け女のような「短くてゾッとするような怪談」を掲示板に書き込んで皆で怖がる、というような遊びのことです。この遊びからはスレンダーマンやジェフ・ザ・キラーといったキャラクターが生まれたり、SCPという「奇妙で不思議なものを報告書形式でまとめる」創作コミュニティに派生したりと、その世界は思った以上に深く大きな規模で広がっています。

そして日本でもこの短編形式の怪談を楽しむ文化は広がっており、その特徴的なネーミングが「くしゃがら」を始めとして各所に影響を与えているものと思われます。ネット発の創作怪談の中でもそういった「存在しない言葉」を取り扱ったものとして有名なのは「くねくね」「八尺様」「巨頭オ」などが挙げられます。いずれも普遍的な日本語の発音の域にとどまるものですが、どこか恐ろしいような、でも見てみたくなるような不思議な魅力があります。そういった創作怪談の多くが真相を詳しく明かされないことから、謎が謎として残り続けるという居心地の悪さも、また人の心を惹きつける理由なのかもしれません。あたかも「くしゃがら」という言葉に固執するあまり発狂してしまったあの漫画家のように。

しかしこういった現象に対して、日本向けの名称は特に付いていないように感じます。クリーピーパスタという単語がその役目を果たしているとは言えますが、「スレンダーマン」と「くしゃがら」では性質も全然違いますので、日本版の名称が欲しいなと思いました。ということで、日本版の創作怪談から生まれたインターネット・ミームたちのことを「ジャパニピーパスタ」と名付けることで、課題達成とさせていただきます。

「ジャパニピーパスタ」 検索条件と十分に一致する結果が見つかりませんでした。

ちなみに私が例にあげた数々の「存在しない言葉」ですが、中には残酷な表現が含まれるものもございますので、安易な検索はお控えいただくのがよいかと存じます。よろしくお願いします。

2022年7月6日
関根 茉樹

公開日/2022年07月06日



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