No.25 B世界天下


脇道くしゃがら道〜まだネットにない言葉〜編集者/柏子見

【B世界天下】我々が認識している現世(A世界)とは別の世界線において覇者となること。あるいはその夢想。
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私(A)が天下を取りそこねた話。

21世紀初頭。
日本でブログサービスがそろそろ普及しだした頃。
はてな社に「はてなダイアリー」というサービスが存在した。
ちょっとだけブームに先行してたのが仇となり名前はダイアリーだったが、内容はブログと何ら変わらなかった。
(サービスが終了した現在は後発の「はてなブログ」に統合されてしまっている)
当時の私(A)は、色んなところでブログを立ち上げてたけれど「はてなダイアリー」は最初期に利用し始めたサービスだった。

この「はてなダイアリー」、
「はてなキーワード」という別のサービスと連動していた。
ダイアリー内の語句をハイパーテキストでリンクし、別ページにて解説するというもの。
自分で勝手に作った造語やデタラメな語源をでっち上げる事が出来た。
我々世代が刺さる例えだと、
ジャンプ漫画『魁!!男塾』の民明書房の様なものだ。

ところで『現代用語の基礎知識』という年鑑をご存知だろうか。
毎年年末に発表される「新語・流行語大賞」。
今ではスポンサーとなったユーキャンが冠についているが、この主催である自由国民社が刊行しているのが『現代用語の基礎知識』という書籍である。

時を戻そう。
2000年代、はてなキーワードと現代用語の基礎知識がコラボするという、なんともイカレた企画が実施された。
そして2007年版(2006年刊行)に、
私(A)のはてなキーワードに登録した造語が収録されたのだ。

身バレを避けるため、その言葉をここに記す事はしない。

100語近く掲載されたので、以下リンク先のどれかとだけいっておこう。

さてその造語。
2023年(令和5年)現在、我々の世界(A)では全く普及していない。
検索で上記サイトが引っ掛かる程度。

しかし別の世界線となれば話は別だ。
夏目漱石が「肩こり」という言葉を生み出す以前は、肩こりというものは存在しなかったという。
言葉というものは、その現象を具現化するのだ。
B世界における私(B)の造語は広く世間に認知され、私(B)はその観念における提唱者となった。
ことあるごとにTVや講演会にお声がかかり、副業禁止の会社を退職せざるを得なくなった。
ほどなく自身をマネジメントする形でコンサル会社を設立。
業績は右肩上がりで多忙な日々を過ごした。

B世界の2023年(平成35年)、
猛威をふるったクラウンウイルスは収束して久しい。
私(B)は起業したコンサル会社を譲渡し、有り余る富で諸国漫遊の旅に出ているyoutuberだ。
旅先でもらったおにぎりのお礼に、傾きかけた企業の立て直しをしたりもするが、それはまた別のお話。

2023年3月1日
森 秀樹

公開日/2023年03月01日



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