No.1 デジタルインク
脇道未来予想図編集者/
「本」というメディアは50年先、どうなっているのだろう?
昨今の本や雑誌、紙媒体の衰退を見るにつけ、よく思う。
本に育てられた身としては、そこに絶対的な価値観を持っていたのだが、ひょっとしたら文字と画像の情報さえあれば、紙に印刷という形態に価値は無いのではないかと思う事がある。
非常に複雑な気分だ。
結構むかし、デジタルインクという技術が紹介されていて、すごいなと思った事がある。
何かというと、紙(フィルムだったかも)に塗布されたデジタルインクに電圧をかけると発色して、文字や写真、絵を浮かび上がらせる事ができるものなのだ。
だったら液晶ディスプレイと一緒じゃん、と思うかも知れないが、大きな違いは電気が切れても、その状態を保持できるのだ。
また次に電気を流せば、違うデータを表示させる事ができる。
ある意味、リアルタイム、オンデマンド印刷と言っても良いかも知れない。
ある時は小説、又ある時は雑誌、そして又ある時は図鑑…
一つの冊子が、無限の内容を持った本として機能する訳だ。
タブレットとの大きな違いはサイズの自由度かも知れない。
内容に合わせて色々なサイズの冊子が作れる。
薄い紙やフィルムに表示しているので、丸めたり、折り曲げたり、ページをめくったりという動作も再現。
必要に応じて中身を差し替えれば良いので、本棚に3〜4種類のサイズの、デジタルインク本があれば良いので、デジタルのメリットである、省スペース化もクリアだ。
本とタブレット端末のいいとこ取りって感じで、本の延命の本命だ!とラッパーの様に韻を踏みながら勝手に思っていた。
しかし、いつの間にかその技術の話は消え失せ、今「デジタルインク」で検索すると、ペンタブレットメーカーが提唱する「スマートフォンやタブレット端末、パソコンなどに手書入力した文字、線、絵などの、「デジタルの手書(描)きデータ」と出てくる。
う〜〜〜〜ん、思ってたのとちょっと違うぞ。
世の技術発展の常だが、色々な理由で、どこかで方向が変わっていったのだろう。
でもいつか、この技術が復活して本の様なデジタルデバイスが現れてくれることを、本好きとしては祈っているのだ。
2024年6月18日
柏子見友宏
公開日/2024年06月19日