No.6 九十歳。景色が愛でたい


脇道未来予想図編集者/

列車の車窓を流れる景色を見るのが好きだ。

市街地の列車でもいいが、とくに駅間が長い新幹線や特急列車がいい。

ひとり旅が多いので、見える景色が話し相手である。

移りゆく風景を目で追いながら、

「聞いたことない名前の会社だけど、何の会社なんだろう?」

「遠くの空が暗いなぁ、○○(目的地)は雨だろうか」

「昔、あのへんに行ったことあったよなぁ」などと考えたり、

ドクターイエローのようなレアな列車とのすれ違いも見どころだったり。

(ドクターイエロー、近々なくなっちゃうそうですね…。)

心地よい列車の揺れに、気づいたら居眠りしていることも間々ある。

ここ最近、九州新幹線が長崎まで繋がって、

北陸新幹線が敦賀まで延伸して、

地方都市へのアクセスは良くなっている。

これから先の未来、鉄道の旅はどうなってゆくのか。

コラムのテーマである「50年後の世界」では

リニア新幹線が東京-大阪間を約1時間で走っているだろう。

いや、これは開業時点の所要時間だから、もっと早くなっているのか。

いまの新幹線と比べ圧倒的に早いのに、さして運賃が変わらないらしい。

タイパを求める人には間違いなく良いだろうが、

「景色を眺める時間が短い」のはツラい。

そもそも「(名古屋から東京間の)9割がトンネル」という事実は、なおのことツラい。

例えば、肘掛に収納された薄い板を窓の高さまで上げると

リアルタイムで地上の景色が見られるようにならないだろうか。

延々と真っ暗なトンネルの非常灯を見続けるぐらいなら

私は、そんなサービスに別料金を払ってもいいぐらいだ。

グリーン車では、窓をタップすると

リアルタイムの景色を同期させたモニターに変わる、とか。

物理的な板状のモニターなんてとっくに過去の遺物になっているのかも…。

2074年(令和56年)

「あれは…何年前だったか、そんなことを書いておったな。」

90歳になった私は列車の窓から景色を眺め、このコラムを思い出していた。

2024年7月31日
内藤 友貴

公開日/2024年07月31日



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