No.10 タコリアン-18


脇道未来予想図編集者/

私は無音の部屋で腕をからませている。
「彼が中指で石持ち上げてる。『もっと広い水槽がいい』らしいけど、どうする?」
「じゃああそこのホームセンター行こう」
「あそこのホームセンターは2年前閉店したよー」
「あれ?わすれてた」

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テーマにもありますが、未来といえば人工知能の発展がやはり気になるところ。
Siriで驚いていたのにCotomoはすらすら相槌を打ってくれます。
あと少しで心も生まれるのではないか!?と期待するくらい。
そもそも心ってやつはどこからやってきたのだろう。
生きていれば誰しも他者理解が必要になります。ですが、その分ディスコミュニケーションに悩むことも多い。
だったらいっそ、人工物や動物の心について考え、夢を膨らませようと思います。

みなさんは動物と心が通った経験はありますか?
散歩中の犬が尻尾を振ってこちらを見ていたり…何かしらあるのではないでしょうか。
今回紹介するのはその中でも海洋生物。タコです。

動物大好きな私は『タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源』を読み、大変驚きました。
本書では哺乳類の進化よりもはるか昔に袂を分かった頭足類であるタコが、独特の知性をもつ存在であることが示唆されています。

サルや犬は群れを作る中で脳が発達したと言われていますし、
オルカは飼育員とお互いに人語とオルカ語?で名前をつけて呼び合うそうなので※1
”人のように”コミュニケーションが取れる哺乳類のことはなんとなく理解ができるのですが、
タコは単独行動。喋らない。しかも寿命は2年ほど。

多いほど賢いとされるニューロンの数は犬猫に匹敵するが、我々の想像する脳っぽいものはなく、足にその神経細胞が集中している。(人間でイメージすると怖い)
短命なのに、燃費の悪い複雑な神経を有する理由も謎。

経験を蓄積するメリットは少ない筈なのに、タコは人を覚え、顔見知りとは親密になり、腕を絡ませてコミュニケーションを図ります。
本書は生物学の分類ではなく、人文学書の範疇のため、今すぐ人工知能に使える大発見ではありませんが、
”タコと人間は、地球人と異星人が出会う体験に近いかも”というような一説に心躍りました。タコが魁種族※2に見えてくる。

今は空想の戯事かもしれませんが、頭足類の研究が進み人工知能に生かされたら、
哺乳類らしくないコミュニケーションが取れるアンドロイドが生まれるかもしれない。
また、彼らから頭足類との付き合い方を教わりたい。

50年後には80歳。たぶん独身…?老人ホームで友達を作れる気がしない。早々に認知症になっているかも。
それならば、触れるだけで意思疎通できるアンドロイドに介護されながら、タコと友情を築けると嬉しい。

タイトルは タコ+エイリアン+U-18※3をくっつけて。

※1 教育出版『ガイアの知性』より
※2 『2001年宇宙の旅』のモノリスを作り出した地球外知的生命体
※3『ブラックジャック』に登場する医療コンピューター

2024年9月4日
伊藤 小麟

公開日/2024年09月04日



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