No.12 懐古厨、その言葉も古い


脇道未来予想図編集者/

未来のことを考えるとき、思い出す映画がある。

ウディ・アレン監督の「ミッドナイト・イン・パリ」。

ハリウッドで小説家を志すある男が、ふとしたきっかけで絵画を通して過去の世界に迷い込んでしまう話だ。

現代と1890年代、1920年代の絵画の中の世界を行き来しながら、ダリやピカソ・フィッツェラルドといった著名な作家との邂逅を通じて自分探しの旅に出る、そんなストーリー。

映画の中で強く印象に残っているシーンがある。

現代社会に疲れていた主人公は、自然が豊かで、人々もせかせかしていない1920年代に憧れを抱き、このまま絵画の中の世界に残ろうと考える。
ところが、1920年代を生きるひとたちは、1890年代は素晴らしかったと言い、1890年代に生きるひとたちもまた、さらに昔の時代の方がよかったとぼやく。その様子をみた主人公は、「現在を生きている人は常に昔の栄光に憧れる」という真理に気づき、現代へ戻ろうと決意する。

この真理は、確かにそうだなと頷かせる部分がある。僕の短い半生を振り返っても、20代の頃は「10代はよかったな」と思っていたし、30代になってからは「それでも20代は楽だったよなぁ」と思っている。40代になれば、今はしんどいと感じるこの30代が恵まれていたと思うのだろう。

広告という仕事においても、ひと昔前は効果測定が曖昧な案件も多かったけれど、現代は解析結果がデータで突きつけられる。不振だった場合は(ありがたいことに)責任の所在まできっちり可視化される。もちろん改善のために必要なプロセスではあるけれど、以前よりも業務に緊張感は増した。コンプライアンス観点の制約も、日増しに強くなっている。

それでも5年後10年後、現代は黎明期にいるテクノロジーが市民権を得たら、未だ世の中にない画期的な技術が発現したら、あるいは現代の価値観や概念が根本から覆るようなできごとが起きたら。広告業界も大転換を余儀なくされるだろう。そしてまた自分は、「まだ〇〇〇〇〇〇を考えなくて済んだ2024年はいいなぁ」と思うのだろう。

未来がどうなっているか分からないが、現代を生きる自分たちは「今やっておくべきコト」に邁進するしかないらしい。「今やっておくべきコト」とは、何だろう。AIと早く友達になっておくことも、たぶん一つの正解。

本稿のテーマ「50年後社会がどうなっているか」からズレている気もするけれど、50年後の自分に「なぜあの時やらなかった?」と叱られないよう、日々の業務に精進したい。


どうしても中央の人物(=僕)が白人になってしまう↑

2024年9月18日
弘嶋 賢之

公開日/2024年09月18日



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