No.17 食の未来
脇道未来予想図編集者/
50年後、「RD潜脳調査室」というアニメの世界が現実になっていたら面白いだろうなと思う。
その世界には「メタリアル・ネットワーク」と呼ばれる、進化したVRのような没入型の仮想空間がある。まるで現実のように鮮明で、体験者は現実と電脳世界をシームレスに行き来できるのだ。
アニメの中でも印象的だったのは「天然野菜が貴重」という設定。電脳世界でさまざまな料理を楽しむシーンがあるが、現実の世界では天然の食材がほとんどなく、人工食材が一般的になっている未来が描かれている。
50年後の現実もきっと、人工食材が普通で、天然のものはさらに希少な存在になっているかもしれない。
実際、今でも秋刀魚や鰻が貴重になりつつあるし、もっと早い未来に天然食材が少なくなる可能性は十分にある。
そして技術の面でも、味をコントロールするツールがすでに出てきている。電流で塩味やうま味を増強できる「味わい強化スプーン」なんてものが現実に存在するのだ。
50年後には、こうしたツールのおかげで人工食材でも天然のような味を楽しめる食事が普通になっているのかもしれない。
天然食材がまだ食べられる今の時代にいることには感謝しつつも、「食べ尽くす世代」になるかもしれないという不安もある。だからこそ、食の未来に向けた新しい取り組み—例えばコオロギパウダーのような代替食材には積極的にチャレンジしてみたいと思っていた。少し前にコオロギパウダー入りのチョコレート菓子を試したときも、食べたいと思って買ったし、自分なら平気だと思っていた。味も悪くなかったのに、なぜか「石ころを食べている」ような気分になり、驚いた。結局、過去の記憶や感情が邪魔をして、意志だけでは乗り越えられない壁があると感じて少しがっかりした。
代替の食を受け入れるためには、「記憶や感情の壁」を越えていくことが必要なのかもしれない。だから、これからの50年は、人工食材や味覚を変えるツールに少しずつ慣れていく「準備期間」としての時間なのかもしれない。
2024年11月6日
高橋 有希子
公開日/2024年11月06日