No.21 50年後
脇道未来予想図編集者/
正月に親戚一同で実家に集まりました。その様子です。
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父、母、私、妻、息子、娘、弟家族が二組と… 合計14人と犬猫。
特に集合時間を決めたわけではないけれど、
準備の時間を計算して11時前には全員集合する。
窓の外では一足先に満腹になった飼い犬がお向かいさんの庭を気にしている。
飼い猫は静かな場所を求めて二階の寝室で居留守中。
「襖に順番書いた付箋貼っとくわ。」と父。
手分けして仏間と座敷の襖を取っ払い大きな一部屋にし、
真ん中にテーブルを3台つなげて、その周りを囲むように座布団を配る。
4月に小学生になる姪っ子は
最近寝返りを覚えた姪っ子の座布団まで準備している。
キッチンにいちばん近い隅にポットと豚汁を置く小さめのテーブルを設置。
それ以外の隅にはストーブを1台ずつ。
もちろんコンセントが足りなくなる。
母が「延長コード、二階から持ってきてー。」と誰かに言っている。
階段は小学校のステージに掛かっている様な組み木式で一階の床が丸見え。
初めての人はだいたい怖がり忍者の様に上り下りする。
それをいちばん近くにいた弟が二段飛ばしで駆け上がっていく。
延長コードは昔弟が使っていた子供部屋に心当たりがあるらしい。
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正午少し前。
テーブルは徐々に料理で埋め尽くされる。
部屋が暖まるのを待てずにつまみ食いをした奴がいる。
卵焼きの滑らかだったであろう放物線が明らかに揃っていない。
つまみ食いをきっかけにみんなが席に座り始める。
決めたわけではないけれど、ちゃんと家族ごとに固まって座る。
娘がビールを注ぎたがる。
父にグラスの持ち方を、まるで剣道の先生の様に丁寧かつ偉そうに指示する。
お酌の上下関係なんていう文化は髙橋家にはない。
7:3 さすが我が子だと心で思う。
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昼食が終わる頃、夕食の献立が決まる。
余った寿司とオードブルをおかずに煮込みうどんをするらしい。
「昼からガソリン入れるついでで、おちょぼさん行ってくるわ。」
ガソリンは名古屋よりも10円くらい安い。
「私も行きたい。」「私もついてこかな。」
40代の3人はお千代保稲荷行きが決定。
実家からお千代保稲荷までは自転車で行ける距離。でも車で行く。
駐車場の係員が運良く同級生だと駐車代が浮く。
「今日Switch持ってきた?」と弟が息子に尋ねる。
「ジャンボリー買ったの?」と息子が弟に尋ねる。
目的は疎通できているらしい。
弟家族を中心にちびっ子チームはTVゲーム。
順番待ちのちびっ子はiPadでパンケーキを積むアプリ。
裏技を使うと80枚以上積めるらしい。
父は飼い犬の散歩へ。
母は姪っ子の寝返りを応援。
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3時過ぎ。
お千代保稲荷から帰宅すると
ちょうどジャンボリーの優勝者が決まっていた。
ちびっ子でも大人に勝てるコンテンツ設計に感謝。
みんなでコーヒーや紅茶を飲んだ後、それぞれの時間を過ごす。
14人いても居心地の良い場所の取り合いにならないのが
9LDKの本領。
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私が呪術廻戦を読み切る頃
どうやら4月に小学生になる姪っ子が泣いている様子。
翌朝早くから予定があるため
弟家族は夕食を食べる前に帰ることに決めたらしい。
「まだ帰りたくない!」と、えずくほど泣いている。
みんなが持ってきたお土産を手分けしてバラし、
一つずつ袋に入れて姪っ子用のお土産袋をこしらえる。
こんな時、妻の手つきは人一倍素早い。
海老を姿焼にした煎餅が入っていたから
なんとか納得してバイバイができた。
親戚たちも雑に見繕ったお土産袋を手にして順番に帰り、
騒がしさが収まったのを見計らって飼い猫は餌入れに向かう。
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7時少し前。
「昼食の寿司がまだ腹にいるわー。」と言いながらダイニングへ。
煮込みうどんならなんとか入りそうだ。
残り汁にご飯を投入し締めの雑炊。
賞味期限が危ないカニカマも入れる。
子供たちは「ダンジョン飯だ~。」と言いながらおかわりまでしていた。
さらにアイスも食べていた。
TVでやっていたババ抜き最弱王が誰かを見届け、
真っ暗な田んぼ道を抜けて我が家へ向かう。
心もお腹もガソリンも満タン。
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50年後、高度なAIやメタバースが当たり前になったとして、
このような「Humannessな記憶」は
貴重な財産として売り買いされているかな。と。
満たされないお金持ちが買う?
私のこの「思い出」にはいくらの値がつくのだろうと思うと同時に
「Humanness」に高値が付くとすれば
少しは相手を思いやる人々が増えて、
平和な未来になっているのかなと願います。
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生成AIを使って感じることとして、
プロンプトを幾度と入力しても
思い描くドンピシャリな画像は出てきません。
部分的に修正を重ねて、近いかなと思うものがやっと。
今回のビジュアルは、普段からこだわりの強い私も
「これでいいかー。」と結局妥協しました。
おそらくすでに今回の脇道エッセイを書いた人たちも
同じ様なことを思ったことでしょう。
この「これでいいかー。」が当たり前化するとどうなっていくかは
言うまでもなく、
便利と安易は似ている様で全くべつものだなと改めて感じました。
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2025年1月15日
offside 髙橋真一
s-takahashi@offside.ne.jp
https://www.offside.ne.jp/st/
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公開日/2025年01月15日